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プレスする高圧の鉄きしむ闇つかみ放すなハーネミューレ
ささくれに潜むささやき聞き逃す指紋の溝をすり抜けて来い
放たれた始まる予感かっさらう侵入者たる光子の群れが
始まりと終わりの光身にまとい君は誰かと問えば月光
​聞こえまい銅の語れし反射光身をくねらせて壁に張り付く
加速器の粒子の夢追いかけて素通りしていく百光年
ステントに守られし我が心臓は蝉の鼓膜に響いては消
やって来るまばたきの間に重力波時空の底で何を見たのか
眼球を流れる飛蚊追いかけて闇にも出でて我を捕らえる
刻み込むひと振りの轍銅の腹予感をはらむ乳濁色
銅版に差し込む光吸い込んで手のひらに乗る漆黒の渦
迷い込む謎解き人に降り注ぐ思わせぶりな光のベール
押し砕き闇の背骨を吸い尽くせ未来装置のブドウ搾り機
世界行き不在者宅に届く文何故と問いたる私の君へ
後ずさる触れる手に咲く夜の夜輪郭のないうねりの底で
終末は漂う雲に抱かれて新月の闇くぐもりの唄
境界で警告の笛鳴り響きサーチライトが残像を追う
天と地の隙間を埋める渚にて真っ逆さまに地軸が堕ちる
雪原に姿を消した蜂の王ざわつく巣箱捏造の蜜
裏切りを告げる伝令騎馬の背に突き立てられた弔いの旗
また逢おう空の揺らぎに予感する水面(みなも)に眩し光の乱舞
滑り落つ水滴の艶頬染めて落日の刻舞う茜雲
錆びた銅膿んだ傷口映し出す鼓膜の裏で炸裂音が
何度かの死の訪れを欺いて洞結節にゼンマイ仕込む

2018.8 Mezzotint考 Copper engraving        2021.7 tsui no tanka

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